スポーツあれこれ by 星野恭子

パリ2024パラリンピック開催中の2024年9月1日の早朝。中央は、パラトライアスロンの会場となったセーヌ川にかかるアレクサンドル3世橋。右手奥はパリ市の歴史的建造物、グランパレ。パラテコンドーと車いすフェンシングの熱戦の舞台となった。

創意工夫で、進化する大会運営
<2024年11月まとめ>

※写真上:パリ2024パラリンピック開催中の2024年9月1日の早朝。中央は、パラトライアスロンの会場となったセーヌ川にかかるアレクサンドル3世橋。右手奥はパリ市の歴史的建造物、グランパレ。パラテコンドーと車いすフェンシングの熱戦の舞台となった。

2024年がまもなく終わろうとしています。今年もパラスポーツ盛りだくさんの1年でした。数々の名勝負や悔し涙のシーンなどももちろんですが、「大規模大会の運営」について、いろいろ考えさせられる年でもありました。

夏には4年に1度の夏のパラリンピックが、フランスのパリ市で初めて開かれました。2大会ぶりに有観客での開催となり、大いに盛り上がりました。日本選手団もニューフェースのメダリストが多数誕生するなど、多くの「史上初」の結果を残しました。パラスポーツの魅力が世界に向けてさらに発信される貴重な機会となりました。

また、「SDGs」も強くうたわれた大会でした。ペットボトル入りの飲料提供はなく、多くの給水所からマイボトルに水を注いだり、売店の飲料もカップを返すとカップ代が返金されたり。上の写真のように、パリの名所や歴史的建造物が活用された会場が多かったことも、パリ大会の特徴の大きなひとつです。新たな施設を造らず、アイデアを駆使して既存の施設をどう活用するか、これからの大会運営にも参考になったのではないでしょうか。

日本でも5月に、パラ陸上の世界選手権が神戸市で開催されました。日本での開催は初めてで、パリ大会の最終予選会でもあり、世界各地から多くのトップアスリートが集い、ハイレベルなパフォーマンスが繰り広げられました。9日間の大会期間中、約84,000人の観客が来場。そのうち約3万人は学校観戦プログラムなどを通した子どもたちでした。キラキラした笑顔と大歓声も大会を強く彩ってくれました。パラ陸上やパラスポーツの面白さを、ダイレクトに感じ取った経験はきっとこの先への刺激となったのではないでしょうか。

大会運営でもさまざまな取り組みがありました。例えば、多くの子どもたちの来場を支えたのが、「ONEクラス応援制度」です。「1クラスの生徒たちを大会観戦に招待する」という目的で「1口5万円の寄付」を募集するというもの。比較的手軽な金額設定もあり、神戸市を中心に多くの企業などが参加しました。子どもたちの入場料や交通費などに使われたそうです。

また、兵庫県内の特別支援学校に呼びかけ、生徒さんたちがさまざまな形で大会に関わりました。例えば、会場周辺の清掃活動や会場売店での販売スタッフ、大会ボランティアへの喫茶サービスなど、さまざまな形で大会を支えてくれました。生徒たちにとっても日頃の学びや活動の成果を発揮する機会となったようです。これらは、会場周辺地域の人たちに大会への関心を喚起する画期的なアイデアであり、子どもたちの経験や自信を育む貴重な機会にもなりました。

2025年にも、さまざまな大会が予定されています。どんなワクワクに出会えるでしょうか。

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<2024年11月度>
■寄稿:
⇒【パラスポーツ】[パリ2024パラリンピック] 手応えも悔しさも糧に新たなスタート! パリ2024パラリンピック、陸上競技の熱闘をふり返る(パラスポ+!/2024年11月1日付)

⇒【馬術】人馬一体で演技の正確性や美しさを競うパラ馬術。馬事公苑で全日本大会開催(ノーボーダー/2024年11月1日付)

⇒【柔道】パリ2024からロサンゼルス2028へ。パラ柔道が新ルールで始動(ノーボーダー/2024年11月8日付)

⇒【ゴールボール/ブラインドサッカー】熱戦つづく日本選手権。ゴールボールは男女年間勝者が決定、ブラインドサッカーは予選ラウンドがスタート!(ノーボーダー/2024年11月15日付)

⇒【マラソン】パラ陸上競技教室開催リポート(東京レガシーハーフマラソン/2024年11月20日付)

⇒【パラスポーツ】パラスポーツを楽しもう! 主な大会・イベント情報~12月開催分(ノーボーダー/2024年11月22日付)

⇒【パラスポーツ】河合純一氏インタビュー(公益財団法人日本パラスポーツ協会常務理事・日本パラリンピック委員会委員長)(スポーツエコシステム推進協議会/2024年11月25日付)

⇒【パラスポーツ】日本代表が海外で躍動! 車いすテニスなど4競技の国際大会をダイジェストで(ノーボーダー/2024年11月29日付)


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■雑誌寄稿:
パラスポーツマガジンVol.14:「パリからロサンゼルスへ。ブラインドサッカー日本代表、より高みを見据えてリスタート」(P30-33)(実業之日本社/2024年11月29日発売)


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■講演:⇒『奥深いパラスポーツの世界』(専修大学/2024年11月6日実施)

(kh)

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著書

明日への勇気

輝くアスリートの感動物語東京2020オリンピック・パラリンピック 4(あかね書房/2022年3月10日発行)
(担当ページ)
車いすラグビー:倉橋香衣選手/トライアスロン:宇田秀生選手/ボッチャ:杉村英孝選手/陸上:佐藤友祈選手/陸上:マルクス・レーム選手

自分らしさをつらぬく

輝くアスリートの感動物語東京2020オリンピック・パラリンピック 5(あかね書房/2022年3月10日発行)
(担当ページ)
自転車:杉浦佳子選手/ゴールボール:萩原紀佳選手/マラソン:道下美里選手

いっしょに走ろっ!―夢につながる、はじめの一歩

「走る」をテーマにさまざまな人々の挑戦を集めた一冊。2012年ロンドンパラリンピック出場を目指す、義足のジャンパー中西麻耶選手と義足職人やコーチたち、全盲のランナー和田伸也選手と伴走者たち、そして、視覚障害ランナーの伴走ボランティアに挑む福井県の中学生たちのドキュメント。

伴走者たち―障害のあるランナーをささえる (ドキュメント・ユニバーサルデザイン)

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ユニバーサルデザイン―みんなのくらしを便利に〈2〉くらしの中のユニバーサルデザイン

図鑑「ユニバーサルデザインーみんなのくらしを便利に」シリーズの1冊。障害のある人やいろいろな立場の人の、それぞれの使いやすさを考えて工夫されている商品やサービスに注目。前半では製品のユニバーサルデザイン、後半では情報のユニバーサルデザインについて、豊富な写真と専門家の解説などで紹介。