スポーツあれこれ by 星野恭子

デフリンピック100周年記念大会となる、「東京2025デフリンピック」のロゴマーク(左)と、大会公式マスコットの「ゆりーと」

2025年、新たな歴史づくりへ
<2024年12月まとめ>

※写真上:デフリンピック100周年記念大会となる、「東京2025デフリンピック」のロゴマーク(左)と、大会公式マスコットの「ゆりーと」

2025年がスタートしました。本年もよろしくお願いいたします。今年もさまざまなパラスポーツ大会を取材し、お伝えしていきたいと思っています。

なかでも大きな注目としては、11月に東京で開催予定の「デフリンピック」です。聴覚に障害のあるアスリートを対象にした国際総合競技大会で、日本では初開催であり、1924年の第1回大会から数えて、ちょうど100周年となる記念大会でもあります。

いわゆるデフアスリートたちのハイレベルなパフォーマンスにも注目していますし、1960年に創設されたパラリンピックよりも長い歴史を持つ大会にもかかわらず、日本はもちろん、世界的にもまだ低い認知度を少しでも高められたらと思っています。

もう一つ、デフリンピックが注目されることで、「聞こえない」「聞こえにくい」というデフの人たちの存在にも注目が高まり、聴覚障害のバリアも少しでも低くなればと願っています。そんな歴史が刻まれますように!

実は新年早々、そんな思いを身に染みてより強くする体験をしました。1月上旬にノルディックスキー大会取材のため、札幌市内のホテルに滞在していた時のことです。

朝6時すぎ、シャワー中にいきなり、男性の話し声と、そのなかで「火事」という単語が聞こえた気がしました。慌ててシャワーを済ませて部屋に出たところで、「ギュインギュイン」という緊急地震速報の警報音が館内に鳴り響きました。

とにかく服を身に着け、廊下に出ようとしたところで、今度は「ピンポンパンポーン」というチャイムが響き、つづいて、今度は女性の声で「火災報知器の誤作動でした」というアナウンスが聞こえました。

念のためフロントに電話して安全がしっかり確認できました。ホッとしましたが、しばらくは手の震えが止まらりませんでした。シャワー中もあって、廊下でのアナウンスは聞き取りにくく、たしかアナウンスは1回だけだったので、状況がはっきり分からず不安感がすごく強かったです。早朝でまだ寝ていて、聞き逃した人もいたでしょう。また、たしかアナウンスは日本語のみ。ロビーで数多く見かけた海外からの宿泊客には、ちゃんと届いたのでしょうか。

さらに落ち着いてから、ふと思いました。もし私に聴覚障害があったら、すぐには気づけなかっただろうし、もし誤報でなく、本当に火災だったら逃げ遅れていたのではないでしょうか。誰かがドアを叩いて知らせてくれても難しく、煙や燃える匂いなどがして初めて気づくくらいかもしれません。

室内の電話は呼び出し音と一緒にランプもついた記憶がありますが、スマホ時代の今、電話機を気にすることはそうそうないでしょう。できれば、音の代わりに光で知らせる緊急ランプなどが完備されるとよいなと強く思いました。

「東京デフリンピック」には世界各地から聴覚障害のある約3,000選手が来日予定です。東京のホテルでは「ランプ完備」のお部屋が少しずつ整備され始めているようですが、まだまだ一部だそうです。

札幌での体験から「音や情報のバリアフリー」について改めて考えさせられました。「デフリンピック」とともに、こちらも伝えていきたいな、いかなければいけないなと思いました。

そんな思いを活動テーマの一つとして、2025年は過ごしていきたいと思います。

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<2024年12月度>
■寄稿:
⇒【マラソン】[第43回大分国際車いすマラソン]伝統の“オーイタ”国際車いすマラソン、中国のジン・ホァが初優勝。鈴木朋樹は納得の2位、新星も活躍、新時代につながるそれぞれの進化(パラスポ+!/2024年12月6日付)

⇒【デフリンピック】「東京2025デフリンピック」開幕まで1年! 小中高生が選んだメダルデザインや新しい応援の形「サインエール」もお披露目!(ノーボーダー/2024年12月6日付)

⇒【デフリンピック】来年11月に開催。「東京2025デフリンピック」は、こんな大会!(ノーボーダー/2024年12月13日付)

⇒【ゴールボール】[2024ジャパンパラゴールボール競技大会] パリで金メダルのゴールボール男子日本がパラリンピック後、初の国際大会で熱戦。ロサンゼルスでの連覇への「明るい第一歩」(パラスポ+!/2024年12月23日付)


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■講演:⇒『奥深いパラスポーツの世界』(専修大学/2024年12月10日実施)

(kh)

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