伝統の大分から、東京での新たな伝説へ!
<11月度まとめ>
※写真上:11月17日に晴天の大分市で開催された「大分国際車いすマラソン」で、弁天大橋上で先頭集団を応援する野球少年たち。今年39回目を迎えた伝統の大会。町をあげての大声援はすっかり風物詩に。
「大分国際車いすマラソン」は1980年の国際障害者年を記念して創設され、車いすだけのマラソン大会としては世界最古という伝統ある大会です。私は2014年に初めて取材に行ったところ、選手のパフォーマンスはもちろん、会場である大分市・県民の応援なども素晴らしくて、すっかりはまってしまいました。以来毎年、取材に出かけています。
私の取材としては6回目、大会としては39回目を迎えた今年も11月17日、秋晴れの空の下で開催されました。18カ国から210選手がそれぞれ障害の程度により3クラスに分かれ、大分市内を巡るコース(大分県庁前発、大分市営陸上競技場着)でマラソンとハーフマラソンで競いあいました。
フルマラソンの男子最速クラス(T34/53/54クラス)はスイスのマルセル・フグ選手が1時間22分51秒で通算8度目の優勝を果たし、2位には4秒遅れで鈴木朋樹(トヨタ自動車)が入りました。その1分後の1時間23分55秒に3位でゴールしたダニエル・ロマンチュク選手(アメリカ)、さらに5秒差で4位の渡辺勝選手(凸版印刷)までの上位4人はなんと、11月7日から15日までアラブ首長国連邦ドバイで開催されていた世界選手権にも出場していました。その後、10時間以上のフライトで羽田空港を経由して大分まで、長距離移動を経てからのマラソン出場でした。
車いすアスリートの中にはトラックからマラソンまで幅広くこなす選手が少なくありません。例えば、2位に入った鈴木選手も来年の東京パラリンピックで「両立」を目指しています。ドバイでトラック3種目5レースを走ったのち、大分でのマラソンに挑んだのは東京パラの競技日程を想定した上でのチャレンジだったと言います。東京パラでは来年8月28日からのトラック種目の後、最終日(9月6日)にマラソンが行われるからで、今大会フグ選手と競り合った末の2位という結果にも「リハーサルとしては100%」と手応えを口にしました。
さすがに、優勝したフグ選手でさえ、「すごく疲れた」とコメントするなどドバイからの連戦組には疲労の色が濃くにじんでいましたが、「心身のタフさ」を十分に見せつけた大分でのレースとなりました。
女子の部でも嬉しいニュースが続きました。まず、優勝したマニュエラ・シャー選手(スイス)が1時間35分42秒をマークし、自身のもつ世界最高記録を更新しました。そんなシャー選手に食らいつき、8秒差で2位に入った喜納翼選手(タイヤランド沖縄)も自己記録を4分近く更新する快走でした。満面の笑顔で、「東京パラリンピック出場を目指して頑張ります!」 と誓ってくれました。
さらにもう一人、ファンを沸かせたのは女子総合4位で日本女子2位に入った土田和歌子選手(八千代工業)です。大分国際では何度も優勝経験があるベテランですが、2016年リオパラリンピック後、トライアスロンに転向したので大分の出場は3大会ぶりでした。タイムは1時間44分43秒と万全ではなかったようですが、「苦しいけど、楽しかった」とゴール後の笑顔は健在。東京パラはトライアスロンと陸上マラソンの「二刀流に挑戦」を明言。出場するだけでも夏冬通算8大会目という偉業ですが、飽くなきチャレンジ精神に注目です。
さて、東京パラリンピックでのマラソンは、大会最終日の9月6日、「東京での開催が決定」しています。男女車いすクラスの他、同視覚障害クラスと男子上肢障害クラスの全5種目が行われます。個性豊かな選手たちによる、東京の名所を巡る「競演」で、どんな伝説が生まれるでしょうか? 今から楽しみです!
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<2019年11月度>
■寄稿:
⇒【ドバイ世界陸上】世界パラ陸上開幕。佐々木真菜が、視覚障害女子400mで、東京パラ内定第1号!(グリッターズ/2019年11月7日付)
⇒【ドバイ世界陸上】山本篤、走り幅跳びで東京パラ内定。やり投げは3選手が入賞(グリッターズ/2019年11月10日付)
⇒【ドバイ世界陸上】東京2020パラをかけた熱き戦い! ドバイでパラ陸上世界選手権開催中(パラスポーツ/2019年11月11日付)
⇒【ドバイ世界陸上】 絶対王者として東京へ。佐藤友祈が世界パラ陸上400mで金メダル(スポルティーバ/2019年11月11日付)
⇒【ドバイ世界陸上】兎澤朋美が走り幅跳びで東京パラ内定。素顔は研究熱心な「質問魔」だ(スポルティーバ/2019年11月15日付)
⇒【ドバイ世界陸上】「ユニバーサルリレー」って何だ? 多様性を象徴する種目の魅力とは(スポルティーバ/2019年11月18日付)
⇒【ドバイ世界陸上】世界パラ陸上閉幕。ベテランと若手の融合でメダル13個。東京パラに弾み!(ノーボーダー/2019年11月18日付)
⇒【パラスポーツ】パラスポーツを観に行こう!~12月開催の主な大会・イベント情報(ノーボーダー/2019年11月25日付)
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P48「file.4 卓球 古川佳奈美選手」
P33「File.2 ゴールボール 小宮正江選手」
⇒『月刊・石垣: パラリンピックのチカラ』日本商工会議所/2019年11月10日)
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■ラジオ出演:
⇒NHKジャーナル:スポーツ『パラ水泳・日本選手権』(NHKジャーナル/2019年11月21日)