スポーツあれこれ by 星野恭子

パリパラリンピックの車いすバスケットボール男子決勝戦、アメリカ vs イギリスの会場。大観衆が選手のパフォーマンスを後押し

スポーツが身近な日常へ
<2024年9月まとめ>

※写真上:パリパラリンピックの車いすバスケットボール男子決勝戦、アメリカ vs イギリスの会場。大観衆が選手のパフォーマンスを後押し

この夏、3回目のオリンピックと、初めてのパラリンピックを開いたパリ市。私が訪れたのはパラリンピックだけでしたが、どの会場も連日、大入りで、大歓声がこだましていました。もちろん、無観客で寂しかった東京大会に比べて、パリは有観客で行われたので、それだけでも「そうそう、これがパラリンピック!」と、嬉しくなりました。

上の写真は、車いすバスケットボール男子決勝戦「アメリカ vs イギリス」が開催中の会場の様子です。観客の姿がほぼびっしりで、MCも入って会場の熱気もすごかったです。

すごかったといえば、観客の応援スタイルはどの会場も似かよっていたのが驚きでした。MCの掛け声で、観客が一斉に足を踏み鳴らしたり、ウエーブがぐるぐると何周も回ったり。応援用BGM?もどの会場もほぼ共通で、観客の掛け声や歓声も皆同じタイミングで入るのです。

大人だけでなく、子どもたちも応援に慣れているなと感じました。会場にはおそらく学校観戦プログラムだと思われる子どもたちがたくさん訪れていましたが、その子どもたちも観戦を応援をとても楽しんでいました。スポーツ観戦が日常なんだなと、うらやましく思いました。

また、車いすバスケの会場では最上段の座席からもコートが良く見えて、そんなアリーナの設計にも驚きました。そういえば、「観戦しやすい設計」は陸上競技場でもテニス場でも自転車競技用のベロドロームでも、いわゆるスポーツ用施設は、観戦しやすい設計が徹底されていたように感じました。

さらに、パリ2024大会では、パリ市内の歴史的建造物の多くも会場として活用されていましたが、こちらは仮設のスタンドを設けて対応していました。

ただし、「急ごしらえ」感は否めず、とくにバリアフリー度は低かったです。仮設スタンドへのアクセスはほぼ急な階段のみがほとんどで、車いすユーザーには難しい環境でした。もちろん、人的なサポートなどいろいろな工夫で乗り越えようとしてはいましたが、そこはかなり計画的に会場施設や周辺駅などをバリアフリー化した東京大会に比べると、残念な印象でした。

また、パリ市内には東京のように地下鉄(メトロ)網が整備されています。1900年に1号線が開通して以来、順に整備され、今は1998年に開通した最新の14号線までが走っています。ただし、こちらもバリアフリー度は低く、駅構内は階段だらけ。パリ大会期間中の2週間、限られた路線のみとはいえ、地下鉄をかなり利用しましたが、例えば、車いすユーザーを見かけたのはたった1回でした。

しかし、大会後、嬉しいニュースを耳にしました。パラリンピック開催を機にバリアフリー化の意識が高まったことで、地下鉄のバリアフリー化も予算をつけて進められる方向だというのです。実現すれば、障害のある人ももっと街に出たり、スポーツ観戦もしやすくなることでしょう。

そんな風に、開催地にプラスの影響を残せることもパラリンピック開催の意義。振り返ってみれば、東京大会にも街のバリアフリー化だけでなく、いろいろなレガシーが見られます。「パラリンピック」の認知度アップはもちろん、駅や街中で、選手だけでなく、障害のある一般の人に対しても「お手伝いしましょうか」などと声がかけられることが増えているというのです。

来年には東京で日本初開催のデフリンピックが、2026年には愛知・名古屋でアジアパラ競技大会が開催予定です。パラスポーツがさらに広がり、街にも、人々の心の中にも「バリアフリー」が広まっていきますように。そうして、「スポーツが身近な日常」もまた、当たり前になっていきますように。

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<2024年9月度>
■寄稿:

⇒【パラリンピック】パリパラリンピックは9月8日まで。まだまだ見逃せない!(ノーボーダー/2024年9月6日付)

⇒【パラリンピック】パリパラリンピックが盛況のうちに閉幕。日本は金14個を含むメダル41個を獲得!(ノーボーダー/2024年9月13日付)

⇒【ゴールボール】[パリ2024パラリンピック ゴールボール男子日本代表] 史上初の金メダル獲得!ゴールボール「オリオンJAPAN」男子、3年間で進化したその強さの秘密とは?(パラスポ+!/2024年9月20日付)

⇒【陸上競技】鈴木朋樹選手、車いす男子マラソンで銅メダル。日本勢16年ぶりの快挙!(ノーボーダー/2024年9月20日付)

⇒【陸上競技】パラ陸上・全盲のランナー唐澤剣也、パリで実感した3年間の進化と課題(ノーボーダー/2024年9月27日付)

⇒【陸上競技】パリ2024パラリンピック 「涙、のち笑顔!」の急展開で銅メダル! 3大会連続メダル、ブラインドマラソン・道下美里が辿った3年間の闘いの道(パラスポ+!/2024年9月30日付)


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■ラジオ出演:
マイあさ!:パリ・パラリンピック現地リポート(NHK第一/2024年9月3日)


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■ネットテレビ出演:
特集:パリ・オリパラ現地特集第10弾!:パラリンピックからオリンピックを考える(オプエド/2024年9月6日)

(kh)

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