世界で戦うパラアスリートの強さ
<4月度まとめ>
※写真上:春の大型連休を利用して合宿中の日本ブラインドマラソン協会の強化指定選手と伴走者たち。(撮影:星野恭子=2018年5月4日/長野・菅平高原 サニアパーク菅平)
「ひとりでコツコツ走ってきたことが、力になりました」
4月22日にロンドンマラソンで行われた「世界パラ陸上マラソンワールドカップ」で、男子T13クラス(軽度弱視)を2時間38分23秒で制し、金メダルとともに帰国した高井俊治選手(31歳)にたずねた「勝利の要因」です。
2018ロンドン・ワールドカップの金メダルを手にする高井俊治選手(撮影:星野恭子=2018年4月24日/羽田空港
長丁場のマラソンレースは、「集団で走るほうが楽」、とよく言われます。互いに刺激しあうのでペースの維持がしやすく、「離されたくない」という思いで集中力も持続しやすいからでしょう。
でも、パラリンピックのようにパラ単独のマラソンレースは選手数が少なく、一般のレースのように「集団」になることはほとんどありません。今回のワールドカップも、ロンドンマラソンが舞台とはいえ、パラ部門は混雑を避けるため一足早くスタート。しかも、高井選手のT13クラスに出場した選手は4人で、他の障害クラスや女子選手を合わせてもパラ部門は約40選手。「ひとり旅」の時間帯も多かったことでしょう。
徳島県出身の高井選手は2016年から日本ブラインドマラソン協会(JBMA)の強化指定選手になりました。視覚障がいは軽度の弱視という状態で、伴走者はつかず単独で走ります。JBMAの合宿に参加することもありますが、練習の中心は一人で黙々と長距離を走り込むこと。仕事と競技を両立させながら、月間走行距離は400km~500kmと言います。
つまり、高井選手は日常的に単独で練習することが多く、そうして培った強い精神力がワールドカップ優勝への大きな助けになった、というのです。ペースを維持する脚力、苦しくなったときに粘れる精神力。日々の積み重ねが強さとなりました。
高井選手の今の大きな目標は「2020年東京パラリンピックでのメダル獲得」です。とはいえ、最も得意とするマラソンでは、T13クラスのレースは2020年大会では実施されません。パラリンピックは公平な競技のために障害クラス別に競技を行うのが基本ですが、全体の参加人数に制限があるため、オリンピックとは違って実施される種目と障害クラスは絞られてしまうのです。
そこで、高井選手は今、T13クラスが実施される5000mに照準を定め、練習をつづけています。2017年には5000m(16分13秒68)と10000m(33分06秒07)でアジア新記録も樹立しています(5000m自己ベストは15分52分34秒)。まずは、今年10月にインドネシア・ジャカルタで行われるアジアパラ競技大会の代表となり、5000mでアジアチャンピオンを目指します。
持久力だけでなく、スピード強化も必要になってきます。スピード練習もまた、一人で行うのは大変です。強い精神力はますます磨かれ、強さも増していくはず。今後のさらなる進化に期待です!
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<2018年4月度>
■寄稿:
⇒【平昌パラ】平昌大会で感じた、「パラリンピックを開く意義」(ノーボーダー/2018年4月2日付)
⇒【パラスポーツ】パラスポーツにも多くの「二刀流」選手が。可能性は無限大!(ノーボーダー/2018年4月9日付)
⇒【車いすバスケットボール】車いすバスケ男子日本代表、強豪3カ国と6月に東京で激突! 「結果を出して、2020大会のリハーサルに!」(ノーボーダー/2018年4月16日付)
⇒【パラスポーツ】パラスポーツを観にいこう! 5月~6月開催分(ノーボーダー/2018年4月23日付)
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■ネットテレビ:
⇒ニューズオプエド:平昌冬季パラリンピック報告(ニューズオプエド/2018年4月2日)
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■トークショー:『“知る!感じる!パラスポーツ 〜2020年の東京パラリンピックを10倍楽しもう!〜 ”』(アースデー東京/2018年4月21日)