スポーツを当たり前に楽しめることの貴さ
<2023年3月まとめ>
※写真上:3月18日から21日まで札幌市の白旗山競技場で開かれた、クロスカントリースキーのアジアカップ札幌大会で、観客の声援を受け、ラストスパートで競り合う選手たち。左から、ヴォヴチンスキー・グレゴリー選手(ウクライナ)、新田佳浩選手、川除大輝選手
取材はいつも楽ではないけれど、「行ってよかったな」と思います。ただ、3月下旬(18日~21日)に札幌市で開かれた「CO・OP 2023FISパラ・ノルディックスキー アジア カップ札幌大会」は、また別の感慨があった大会でした。
実は大会にはもう一つ、「ウクライナ特別招待・親善大会」という名称も付加されていて、実際、日本障害者スキー連盟が実施した寄付活動を通してウクライナ選手団が招待され参加していました。
表彰式後に記念撮影に収まる新田佳浩選手(左)と川除大輝選手(右)に、ウクライナのメダリストたち
そして、世界屈指のクロスカントリースキー強豪国として力強いパフォーマンスを見せてくれるとともに、レースの合間に見せる他国選手との称え合いや笑顔の交流シーンもとても印象的でした。約1年前に開催された北京2022北京パラリンピックで、悲痛な表情でレースに立ち向かっていたのとは異なる選手たちがそこにいました。
2022年3月4日に開幕した北京大会は、過去に取材したどのパラリンピックとも異なり、華々しいワクワク感よりも重苦しい雰囲気が勝るような幕開けでした。その10日前に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻が色濃く影響していたからです。
開会式で、IPC(国際パラリンピック委員会)のアンドリュー・パーソンズ会長が「平和」を強く訴え、その最後をひときわ強く高い声で「Peace!」と結んだスピーチは、今でも忘れられません。
⇒【参考】[第13回冬季パラリンピック北京大会]パラアスリートの輝きと平和への祈り。パラリンピック北京大会の特別な10日間!(パラスポ+!/2022年3月25日付)
そんななか、ウクライナの選手たちは力強いパフォーマンスでメダルを量産しました。でも、笑顔はなく、コメントでも「母国を勇気づけたかった」「早く戦争が終わってほしい」といった言葉を繰り返すだけ。複雑な思いを抱えながら取材していたことを思い出します。
あれから1年が経ちましたが、ロシアによる侵攻はまだ終わっていません。今大会でウクライナの選手たちにお話を聞いてみても、まだ戦禍のなかで苦しむ毎日はまだ続いていて、スキーの練習はもちろん、生活さえ大変な選手たちもいるのだそうです。
それでも、「戦争でなく、スポーツで戦おう」というメッセージを伝えたいと練習に励むウクライナの選手たちの姿に、当たり前にスポーツを楽しめる毎日に感謝するとともに、平和への思いを新たにしました。
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<2023年3月度>
■寄稿:
⇒【車いすテニス】プロが若手にテクニックなどを直接伝授! 日本車いすテニスの躍進を支える画期的なイベント(ノーボーダー/2023年3月3日付)
⇒【マラソン】【レポート】東京マラソン2023 プレスカンファレンス(東京マラソン公式HP/2023年3月4日付)
⇒【マラソン】東京マラソン2023 車いすマラソンレポート(東京マラソン公式HP/2023年3月6日付)
⇒【クロスカントリースキー】北京パラ金の川除選手、ノルディックスキーW杯総合チャンピオンに! 新田選手も3位に!(ノーボーダー/2023年3月10日付)
⇒【陸上競技】パラ陸上の車いすレースを、小学生が間近で観戦。「すごい速くて、ビックリ!」(ノーボーダー/2023年3月17日付)
⇒【ゴールボール】[2023ジャパンパラゴールボール競技大会]オリオンジャパン女子、ジャパンパラ4カ国対抗戦で優勝! パリ出場権獲得への手応え(パラスポプラス/2023年3月24日付)
⇒【クロスカントリースキー】札幌でノルディックスキーのアジア杯開催。ウクライナ選手団も招待参加。「スキーで母国に力を」(ノーボーダー/2023年3月24日付)
⇒【パラスポーツ】パラスポーツを楽しもう! 主な大会・イベント情報~4月開催分(ノーボーダー/2023年3月31日付)
■雑誌寄稿:
⇒『スポーツ歴史の検証:オリンピック・パラリンピック冬季大会の価値を考える』=P163-168: マセソン美季のI'mPOSSIBLE(笹川スポーツ財団/2023年3月25日)